「あの人らしい!」といわれる人
みなさんの周りにどんな状況下でも、非常にその人らしいと周りに言わしめる決断・判断をやってのける人はいないだろうか。置かれた状況が順境であっても、たとえ逆境であったとしてもだ。
キャリアコンサルタントであるわたしとしては、そんな人を見かけるたびに、この人は「キャリアアンカー」をお持ちなのだなと感じ、その方の「キャリアアンカー」をうかがってみたくなる。
「キャリアアンカー」ってなに?
「キャリアアンカー」という概念を提唱したのは組織心理学者のエドガー・シャインである。シャインは、『個人には仕事生活の中で拠り所としているものがある』とし、その拠り所を「キャリアアンカー」と名づけた。
ききなれないこの「キャリアアンカー」であるが、“アンカー”を日本語訳するとそれは“錨(いかり)”、言わずもがな停泊する船を安定させるあの“錨”である。つまり「キャリアアンカー」とはキャリアにとっての錨、要するに“人がキャリアの中で岐路に立った時、進む道を選ぶ際の判断根拠になる「譲れない信念」ということになる。
働く中での「キャリアアンカー」
職業人にとり自らの「キャリアアンカー」を認識していることは重要だという。例えば上述した通り、キャリア上の選択場面で進むべきみちを明確化しやすくなる、またキャリアの構築段階で、自らの成長・発達の機会が目の前にやってきたことに気づきやすくなるため、格段にチャンスをつかみやすくなる。
といったように、自らの「キャリアアンカー」を持つことで、わたしたちは成長のスピードを速められるし、また成功への切符もつかみやすくできる。
だからこそわたしたちは「キャリアアンカー」について、キャリア上で遭遇する様々な経験を経るごとに見つめなおし、自らの感性というフィルターを通して都度再構築、再認識していきたい。
そういった作業をこつこつと繰り返していくことは、非常に地味な作業ではあるものの、耐えてきた地道な時間から生まれた成果物こそが、いざ目前にチャンスが巡ってきたときに先手必勝を取るための大きなアドバンテージにつながるキーになる。
まさに「成功を手にする者の影に努力あり」である。
VOCA時代をサバイブ
今の時代は「VUCA」の時代と言われる。「Volatility(激動)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(不透明性)」の頭文字をつなげた言葉だ。
様々な物事がアップデートされるサイクルははやまり、確実な正解などなく、様々な問題が社会全体に重層的に重なり複雑化し、誰も自分が向かう先に光が降り注ぐ場所が待ち受けているかどうかなどわからない、そんな厳しい時を私たちは生きている。
だからこそ今「キャリアアンカー」を自分に問うてみてほしい。
不確実に、ゆらゆらと揺れ動く周囲の環境にいちいち流されて疲弊してしまう前に、自らのキャリアを何を拠り所とし、どんな信念をもって紡いでいくのか、ここで自分の内なる声に耳を傾けてみたい。
「キャリアアンカー」を持ち、自らのキャリアに主体的にかかわり、また自分軸であらゆる選択場面をさらりと切り抜ける。
これからの時代、あらゆる場所で「キャリアアンカー」を持つ人が精彩を放つ。