「早期退職」はもはや他人ごとではない
世間では多くの企業が早期退職希望者を募っている。
ひと昔前なら、景気の影響を受けにくい“安定業種”と言われている業種の、特に事務職であるわたしにとり、この手の話は「対岸の火事」だと感じられるものであった。
しかし先日、わたしの属する会社でも、人件費の安価なわれわれ事務職に対し、早期退職勧奨が始まった。
これは社の歴史上初めての動きであり、わたしは「この日が来たか」としみじみその事実をかみしめた。
「早期退職」の条件面
多少動揺する中であっても、まずやるべきことは、もちろん“条件提示”の内容精査である。
そして今回提示された内容が以下のものであることを理解した。
・早期退職を希望しここで手を挙げた場合、会社が転職活動を支援する
・ここで手を挙げたことを原因とした人事考課上の不利益なない
・手を挙げていい対象年齢は45~53歳、管理職以下
・手を挙げ、転職活動の結果、退職に至った際の退職金支給基準は、自己都合ではなく会社都合となる(満額支給)
・転職活動に際しては、転職エージェントのバックアップを付ける
以上のようなもので、内容から「バブル世代」を標的にしたものであることは明確だった。
会社が仕掛けてきた心理戦
この「早期退職」の条件面が社内で通達されたのが、6月中旬。
実はわたしの属する会社では、6月の初旬に賞与の支給があり、このタイミングで「自分」に対する「会社側の評価」がフィードバックされ、同時に「昇級・昇格」が決まってくる。
昨今の「バブル世代いじめ」、「氷河期・超氷河期優遇」の背景もあり、(もちろん真の実力もあり)、バブル世代は昇級・昇進にありつけないどころか、氷河期・超氷河期や、さらに下の世代から出世面で追い抜かされた事実をこの6月初旬に受け止めることになるわけだ。
6月初旬に受けた、決して芳しくない会社からの自分へフィードバック内容に対し、悶々とした、やりきれないような思いが適度に熟成されるのが6月中旬。バブル世代の中には「ばからしい、もう辞めてやる!」と考え、やけくそで「早期退職」に手を挙げ、まんまと会社が仕掛けたトラップに引っかかる「カモ」がいるだろうことを、まるで見越したかのような、非常に絶妙なタイミングでの「早期退職」勧奨だったことには、なんだか悔しいような、悲しいような、複雑な思いを抱かざるを得なかった。
「早期退職」勧奨で覚醒するバブル世代
しかしながら、この「早期退職」勧奨を、「与えられたきっかけ」と、ポジティブにとらえるバブル世代も、少数派だが確かに存在するようだ。
バブル世代は、入社して今に至るまでずっと、「同じ会社で退職まで働く上の世代」をみてきた世代だ。
個性を噛み殺し、納得できないような出来事があっても、多数派からの「同調圧力」にも屈する以外の選択肢を持つことすら許されなかった世代だ。
そんな世代が今「自由」への片道切符を会社から受け取ろうか、どうしようかの決断に揺れている。
これまで会社という温室で、ちょっとのストレスはあれど、充分に恵まれた環境でぬくぬくと暮らしてきたのだから、全く未知の世界へと踏み出すことを、「リスク」ととらえてしまうのは、ごく自然なことだろう。
十人十色のストーリーが生まれる予感
「リスク」を受入れることで「報酬」が手に入る。これは世の中の共通認識である。
今まさにバブル世代は「早期退職」で「未知の世界へ踏み出す」という「リスクテイク」をするべきか否かの決断を迫られている。
「リスクテイク」と引き換えに手に入れる「報酬」をどうポジティブに、いかに創造的に描くことができるかは本人次第。
この先この「早期退職」という事例から、十人十色のストーリーが生まれてきそうで、非常に楽しみに感じている。